店舗の資産価値が実際にゼロ円の店は

100店舗近くのお店を運営しているのに、その店舗の資産価値がゼロの店があります


資産価値がゼロ円の店舗は?
           2017.8.31

 三越日本橋本店の土地や建物などの資産価値(帳簿価額)は1000億円を軽く超え、17年3月期は1220億円でした。この金額には、高級ブランド品などの店舗在庫は含まれていません。1220億円のうち土地価額は973億円ですが、実際には2000億円や3000億円を積み増ししても買い求めることはできないかもしれません。
 たった1店舗で1000億円以上の資産価値がある三越日本橋本店とは対照的に、会社で運営している全店舗を合計しても、資産価値が「0=ゼロ」ところがあります。カジュアル衣料販売のジーンズメイト(7448)です。
 同社は17年2月末現在、「JEANS MATE」や「Blue Standard」「ワケあり本舗」など91店舗を運営。そのため、実際には店舗構築物や機械装置、運搬具、工具といった有形固定資産があるのですが、それらは無価値というわけです。
 112店舗を運営していた10年2月期は、1店舗平均の資産価値は715万円でした。それが11年2月期はゼロ円になり、それ以降は基本的に無価値状態が続いています。
 もちろん、「減価償却」という会計処理をするため、店舗の資産価値は年月の経過とともに自然に減少します。しかし、たった1年で無価値になったりすることはあまりありません。
 ジーンズメイトの店舗の価値がゼロになったのは、「減損損失」という会計処理をしたためです。企業の稼ぐ力が低下し、計上している店舗資産の回収が見込めない場合には、回収が可能な額まで帳簿価額を引き下げるものです。
 
ジーンズメイトの店舗推移
13年2月期 全100店舗
  〔1店舗平均〕 1日売上高29.2万円 従業員0.99人
14年2月期 全98店舗
  〔1店舗平均〕 1日売上高27.2万円 従業員0.77人
15年2月期 全97店舗
  〔1店舗平均〕 1日売上高26.8万円 従業員0.70人
16年2月期 全94店舗
  〔1店舗平均〕 1日売上高26.4万円 従業員0.65人
17年2月期 全91店舗
  〔1店舗平均〕 1日売上高26.6万円 従業員0.79人

 ジーンズメイトの低迷は、「全店舗数」と「1店舗1日平均の売上高・従業員数」の推移からも明らかです。
 全部で112店舗を運営し、1店舗1日平均売上高は40・7万円、1店舗平均従業員は2・1人だった10年2月期以降、店舗数も1店舗1日平均売上高・従業員数も減少傾向が続いています。
 結局、ジーンズメイトは、年々稼ぐ力がなくなっているということです。実際、同社は、2008年2月期の最終黒字を最後に、その後は赤字(当期純損失)を継続中です。過去からの利益の蓄積があることと、借入金がないこともあって事業が継続できていると見ることもできます。
 
 ちなみに、ジーンズメイトの従業員平均年間給与は450万円前後での推移です。特別に高給といはいえませんが、従業員の平均年齢が30歳台後半で、13年を超す平均勤続年数は、従業員の定着率が低いという課題を抱える小売業としては珍しいといっていいでしょう。
 一方、社内取締役の平均年俸は、業績の低迷もあって1000万円台前半での推移です(17年2月期は1223万円)。
 
 ジーンズメイトは、17年2月にRIZAPグループ(2928)の傘下に入りました。200円程度で低迷していた株価が689円(2017年8月31日)と、上昇に転じたのはそのためです。株価同様に業績も上昇するでしょうか?
 RIZAPグループを牽引するスポーツジムのRIZAP㈱が運営する115店舗の資産価値はおよそ43億円、店舗従業員・パートは950人です。1店舗平均3685万円で、運営スタッフは8・2人ということになります。
 

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