大規模な構造改革を打ち出した3大銀行グループ。グループの中核を担う三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の有価証券(株式・債権)の保有推移も確認しておこう。
3行は毎年2000~4000億円台の有価証券利息配当金を計上しているが、保有する有価証券内訳では、国債の保有が半減から7割減と大幅削減になっているのが目立つ。
日銀による国債の大量購入で、銀行にとっては安全性や現金化などの面で極めて利便性が高かった国債市場がほぼ消滅したということ。国債に代わって外国債券・株式の保有を増やしていることは明らかだ。
■3大銀行の有価証券運用推移(単体ベース)
【三菱東京UFJ銀行】
13年3月期
有価証券63兆0713億円
うち地方債2120億円
うち社債2兆3660億円
うち株式3兆6725億円
17年3月期
有価証券42兆2355億円
うち国債21兆0412億円
うち地方債1兆0097億円
うち社債2兆4408億円
うち株式4兆5309億円
増減(13年3月期比)
有価証券△20兆8358億円
うち国債 △20兆7146億円
うち地方債 +7977億円
うち社債 +747億円
うち株式 +8584億円
【みずほ銀行】
14年3月期
有価証券42兆1747億円
うち国債24兆9714億円
うち地方債2408億円
うち社債2兆6159億円
うち株式3兆3388億円
17年3月期
みずほ銀行
有価証券31兆2647億円
うち国債12兆8259億円
うち地方債2815億円
うち社債2兆4302億円
うち株式3兆7337億円
増減(14年3月期比)
有価証券△10兆9100億円
うち国債 △12兆1454億円
うち地方債 +406億円
うち社債 △1856億円
うち株式 +3948億円
【三井住友銀行】
13年3月期
有価証券41兆3470億円
うち国債26兆2316億円
うち地方債1590億円
うち社債2兆4714億円
うち株式3兆9007億円
17年3月期
有価証券24兆3423億円
うち国債8兆0096億円
うち地方債705億円
うち社債2兆5190億円
うち株式4兆1640億円
増減(13年3月期比)
有価証券 △17兆0046億円
うち国債 △18兆2220億円
うち地方債 △885億円
うち社債 +475億円
うち株式 +2632億円
3大銀行グループは、中核の銀行を中心に構造改革を進めるとともに、成長分野に人材を投入し収益の拡大を目指すわけだが、その実現性はどうか。
実は、銀行グループの株主総会は近年、すっかり様変わりしている。声高に発言していた総会屋と称された一団は消え、代わって主役に躍り出ているのは一般株主だ。その発言内容も、支店の混雑や店舗閉鎖へのクレームが中心だったりする。それだけに、相次いで打ち出したリストラ策がスムーズに進むのか、という疑問が残るのも事実だ。
3大銀行グループが、成長分野のひとつとして位置付けるのは、富裕層を対象にした資産運用相談や相続業務、投資銀行業務などによる手数料収入の拡大である。
ただし、従来から叫ばれていることであり、コストばかりがかかる少額預金者の口座の取引は取り止め、顧客は富裕層に絞りたいという本音もあるだろうが、実現となると現実的ではない。とくに、手数料収入ビジネスは、ライバルは国内にかぎらない。直近でいえば、東芝の資金調達案件である。
東芝は半導体子会社の東芝メモリの売却代金の入金を待たずに、債務超過状態を解消するとして第3者割当による新株を発行して6000億円を調達するが、その増資実務を担うのはコールドマン・サックスだ。野村証券、それに銀行系列のみずほ証券やSMBC日興証券が関与する割合は小さい。手数料収入の元手になる発行緒費用は、261億円と見込まれる大型案件だ。
みずほFGと三井住友FGにとっては、海外業務の拡大が急務である。海外事業では米国やタイの子会社が好調で、世界金融大手の米モルガン・スタンレーの利益を取込む三菱UFGが大きく先行。売上高に相当する経常収益の4割は海外だ。
少人数体制のため経費割合が低いにもかかわらず、利益への貢献が大きい債権トレーディング業務の巧拙も問われる。この点でも「市場部門」と分類している三菱UFJFGが一歩リードしているようだ。10倍以上の人材を抱えるリテール(小口)業務をはるかに上回る利益を実現している。
三菱UFJFGは、グループ内の機能別再編を進めており、三菱UFJ信託銀行の法人貸出等業務を三菱東京UFJ銀行に移管。その三菱東京UFJ銀行は、18年4月に〝東京〟を外し、三菱UFJ銀行として再スタートする。みずほFGは資産管理業務で三井トラスト・ホールディングス(HD)と、資産運用では第一生命HDと合弁展開。三井住友FGは、地方銀行の運営でりそなHDと手を組んだ。
三菱UFJFGに対抗して、みずほFGと三井住友FGが経営統合を選択するといったことは当面はあり得ないだろうが、バブル経済崩壊後のように追い込まれ再編ではなく、攻めの再編はあってもいいはずだ。